宗次郎の死 その③

憎むべき恩知らずもの!と思う一方で川路は、こんな事態を招いた原因の一つが受人としての自分の愛情の薄さであったと反省しないではいられませんでした。

天下にわれほど親敷ものはあらねども、共に死せむといひしもの程の深切りの百分の一もなし。それがために死せしなるべし。

孤児同然の宗次郎には私以外に頼りになる人はいないはず。そう思っっていた私は、しかし「一緒に死のう」と行った女が注いだ親しみの百分の一だって彼に示しただろうか。だからこそ彼は、女の親しみの深さに引きずられて情死に至ったのだろう。

川路は続けて「可憎之至、可憐之至也」と書いています。可愛さ余って憎さ百倍?いえ、憎いのは憎いがそれにもまして憐れでならないといった心境ではなかったでしょうか。

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