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本当の「不倫」 ②

でも、不倫の語義をこれだけだと思ってしまうと・・・・。すくなくとも昭和前期より以前の文献や資料を読み解く際に大変な間違いを犯してしまうおそれがあるのです。

明治六年、祖父を殺された者が、復讐行為として相手を殺害したば場合の扱いについて論じた公文書を覗いてみると、

 

復讐ノ儀ハ擅殺ノ罪、固ヨリ赦スベカラズト雖モ、人ノ財宝妻妾ヲ奪フガ為メ謀故殺セシ者ト其刑ヲ同スルハ不倫二付、尋常謀殺ヲ以テ論ゼズ。(以下略)

 

政府がいくら敵討ちを禁じたからといって(たとえ父の敵であっても殺害することを禁じたのは、この年二月のことでした)、父の敵討ちを遂げた者をただの強姦殺人と同等に罰するのは「不倫」ではないか(刑を減軽すべきではないか)、と論じられているのです。

ところで、ここで用いられている「不倫」の意味は、「人論にはずれる」ではありません。「人論にはずれる」と解してもなんとなく意味が通じてしまうので誤解しやすいのですが、全然違うのです。

本当の「不倫」 ①

ちかごろ私は、柄にもなく日本語の乱れを憂慮しないではいられません。憂いの種の一つは「不倫」・不倫という言葉は、元来人妻や妻帯者のいけない(つまり配偶者以外との)恋愛を意味するものではなかったのに、今や不倫といえばもうそれしかないという状態なのです。

小説や週刊誌の類で使われているだけならまだしも、最近ではどうやら学術用語としても定着しつつあるようです。たとえば家族研究の案内書「AERA Mook」の中では、不倫は「家族を読み解くためのキーワード」の一つに挙げられ、「字義的」には「人倫にはずれる」といういみであるが、「婚姻外性関係の場合のみ」こう呼ばれると記されています。たしかに昨今の用例ではそのとおりであり、「広辞苑」ほか大方の国語辞典に照らしても、この「字義」は誤りとはいえないでしょう。

furin